『人間昆虫記』—かわいそうな魔性の女

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私……
さみしいわ
………
……ふきとばされそう




魔性の女、十村十枝子。
時には女優、デザイナー、作家…
美しい美貌と溢れる才能で世界にはばたく、夢のような女性です。

しかし、彼女は舞台をてがける男から技術を盗み、デザイナーの男からは彼のデザインを盗み賞を受賞していました。
栄光は全て、盗んだ物。才能ある男に近付き、その才能を完璧にコピーしてしまいます。いや、吸収といった方が適切かも知れません。

怖いのは、彼女の目的が男をたぶらかすことではないところ。
美貌を使って男をたぶらかし、その才能や力を完全に我が物としてしまう。
過去の自分を簡単に脱ぎ捨てて、新しい栄光を我が物にしていきます。
さなぎが蝶へと羽化するように。

その強かさを見ていると、「嫌な女だ」という感覚は、不思議と覚えません。むしろ現状に留まらず、次々と羽化を繰り返していく彼女には清々しささえ感じます。

彼女の魅力は、決して完全ではないところです。
母をかたどった蝋人形の前では子供のように振る舞い、時には本気で人を好きになってしまう。
悪女である彼女の強さは、弱さの裏返しに見えてきます。

だからこそ、彼女には嫌悪感を覚えにくいのです。
彼女が、努力している人に見えるから。


歌手の岡村靖幸が、様々な人と「純愛」についてインタビューをし合う、『純愛カウンセリング』という本があります。




その中で、魔性の女について、以下のようなやりとりがあります。対談しているのは、岡村靖幸と、整形外科医の藤田徳人。


藤田 魔性の女はね、常に純愛です。
岡村 彼女たちなりの理論では?
藤田 ええ、常に。というのは、彼女たちは妥協しません。だから、常に男を競わせるんです。競わせておいて、いいなぁと思ったらそちらに向かう。もしそれ以上の男が現れたらそちらに純愛する。だからこそ、魔性なんですよ。男はどんどんやられてしまう。


岡村 僕の中での魔性の女は、手練手管が、ある程度こう、しっかりした人って印象がありますね。たとえばこういう話をよく言うじゃないですか。「マメな男はモテる」と。そういった意味での助成の側からの視点での、「マメ」的、手練手管をたくさん持っていて、たくさん実践して成功なさってて、さっきの話じゃないですけど、作戦づけるみたいなことはもう平気で。彼女の中では純粋な行為だから、なおさらなのかもしれませんが。そういう意味では百選錬磨でしょうし、いろんなデータも持ってらっしゃる。そんな感じがしますね。


なんだか、とても十村十枝子と重なる描写でした。
ここでも岡村ちゃんの魔性の女へのある種の尊敬がうかがえるように、たくましく男から養分を吸い取って行く十村十枝子には感服してしまいます。


一緒にいる時は最上の夢を見せ、離れる時は絶望だけを残していく。
その一貫した生き様は、鮮やかです。

恋の炎で焼かれ死ぬ男たち。
こっけいにも見えますが、それを笑えない自分がいます。



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