いつか自分だけの本屋を持つのもいい〜三田修平〜

「いつか自分だけの本屋を持つのもいい」、第4回目の講義を担当したのは、BOOK TRUCKを切り盛りする三田修平さんでした。


BOOK TRUCKは、車に本を積んで様々な土地で本屋を開く、移動式書店です。今回は、実際に使われているトラックで講義会場である東京芸術学舎まで来ていただいので、聴講生たちで観察。
小さな空間に本の香りが立ちこめていて、なんだか贅沢に思えました。


book truck


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今年2月に出たHUgEの本屋特集でもBOOK TRUCKが取り上げられています。



三田さんの講義は、今までの講義とは毛色が違うものでした。
終始「本屋で食べていくためにはどうすればいいか」という問題にフォーカスされていました。
どちらかというと、今までの講義は本の持つ新しい可能性を見ていくような、「美しい」内容が多かったように思います。
一方今回は、本屋を成り立たせることの難しさや、実際的なお金の面に集中した講義でした。

三田さんの経歴ですが、

TSUTAYA TOKYO ROPPONGI → CIBONE青山店のブック担当 →SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSの店長

という流れで本に関わられてきました。
そして去年の3月に独立し、BOOK TRUCKを始めることとなります。
最近のお仕事としては馬喰町のカフェ、イズマイのブックディレクションを担当されています。



イズマイはインタビュー形式で求人募集をかける日本仕事百貨にも詳しい説明が載っています。

本とコーヒーの毎日


独立の経緯としては、書店に勤めているとそこに来るお客様向けの棚作りをしなければならず、「置きたい本を置きたい」という欲求を抑えなければいけなかったらだそうです。
移動式本屋であれば、品揃えも、出店形態も全て自由です。

先述したように、三田さんが普段使われているトラックが講義会場までやってきていたので、受講者全員でトラックの前まで行って直接三田さんに詳細をお聞きする時間がありました。

book truck

このトラックですが、もとはアメリカのものだそうです。
熊本のディーラーから買い付けたもので、かかった費用は車代+整備費で約100万円。
意外と安く済むものなんだな、という印象でした。

味のある本棚もお手製。近所のホームセンターで木材を切り出して作ったそうです。
実はボンドで止めただけのものだそうですが、作るのにはちょっとしたコツがあるんです。





↑の下の形で作ってしまうと、底の板が本の重みに耐えかねて落ちてしまうそうです。
うまく作ればボンドで大丈夫、という言葉に受講生の多くは驚いていました。

しかし、このBOOK TRUCK燃費が著しく悪いんです。
リッター5kmのため、遠方への出張は中々厳しいそうです。


積んである本の中では絵本が目立ったのですが、子どもが多いイベントへの出店が多いのと、BOOK TRUCKに興味を持ってくれるのは子どもが多いから、というのが理由でした。
本を積んでやってくるトラックなんて、それこそ絵本に出てきてもおかしくない光景ですよね。


講義の後半は、非常に現実的な本屋の経営とお金の話が繰り広げられました。初めて知る事実も多く、実用的なものでした。

まず、新しく作った書店で新刊を扱うためには、取り次ぎと契約する必要があります。
本というものは基本的に出版社→取り次ぎ→書店という風に流れているため、取り次ぎを介さないと新刊を手に入れることはできません。

しかし、新たに取り次ぎと契約を結ぶ際は、頭金として数百万円を用意しなければいけません。言うまでもなく、非常に高いハードルです。
新刊を扱わないのなら、自然と扱うものは古書に絞られます。

ただ、新刊を手に入れる方法は2つあります。
ひとつは、出版社との直取引。基本的には本の仕入れは取り次ぎを介すると書きましたが、直接出版社と契約することも可能です。直取引を進める出版社も増えてきているそうです。

たとえば、ディスカバー21は取り次ぎを介さず直取引で契約している出版社です。








とはいえ、数多くの出版社ひとつひとつと交渉、契約するのも現実的ではありません。
そこで、残るもう1つの選択肢が活きてきます。
それは二次卸し業者を利用すること。

日販やトーハンといった大手取り次ぎのさらに下流に位置する二次卸し業者ならば、数百万円もの保証金は必要ありません。その分大手取り次ぎから仕入れるよりも利益率は下がりますが、新刊を扱う際の有力な手段となりそうです。

この二次卸し業者の存在は、今回の講義を受けるまで全く知りませんでした。
新刊を置く、というのは売り上げ以上の意味を持つことがあります。
たとえば村上春樹が新しい長編を書いていることが話題になりましたが、村上春樹の新刊を置いているかどうか、というのは書店としてのブランドにも影響してきます。

「本を売って利益を上げる」ということにフォーカスした場合、古本は大きな収入源となります。
なぜなら、新刊は定価が決められていますが古書ならば店の裁量で値付けができるからです。新刊から書店が得る利益は、だいたい定価の23%程度と決まってしまっています。
もちろん古書は返品できませんし、商品として耐えるようきれいにする手間がありますが、大きな利幅を確保できる古書は書店にとって重要になってきます。


三田さんは、本屋の運営として3つの方法を挙げられました。

①本を販売して利益をだす
②本+αを販売して利益をだす
③別事業で利益をだす


②は、たとえば書店でイベントやトークショーを行うなどして、そちらからも収益を得るというスタイルです。
下北沢のB&Bなどはほぼ毎日イベントを行っています。


b&b


③は、本業をすでに持っており、そちらで稼ぎながら本屋を経営するというものです。ここでフクヘンさんが、「それって趣味って言うんじゃないの?」と突っ込まれていましたが…近しいものかも知れませんね。

講義では、この3つの中で最もハードルが高いのは、①の「本を販売して利益を出す」という方法だと説明されました。
ある意味、もっともスタンダードなスタイルの本屋が最も利益を出すのが厳しいと言うのは、ため息とともに納得してしまうものでした。

その後は粗利の構成要素を分析して本屋の経営を考える、実際的な講義でした。

最後に、「三田さんが構想されている今後の展開を教えてください」と質問させていただきました。
それに対する三田さんのお答えは、


今はイベントに出店する形が多いが、できれば生活にとけ込む形で活動していきたい。それこそ、公園に出店するとか。


といったものでした。
講義を聞いていると、三田さんのそのフットワークの軽さが特徴的でした。
呼ばれた所に、行きたい所に本を詰めて赴く。
フクヘン。さんの「品揃えが違うんだし、本屋の前でやればいいんだよ。全国の本屋をキャラバンすればいいじゃん!」といった言葉も、BOOK TRUCKの身軽さがあってこそのものです。

もしかしたら、あなたもどこかの街で本を詰めこんだ青いトラックに出会うことがあるかも知れません。
その時はぜひ、遊具で遊ぶ子どものように無邪気にトラックの中へ足を踏み入れてみてください。

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なお、BOOK TRUCKにご用命の際は以下のfacebookページからどうぞ。

http://www.facebook.com/Booktruck


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