アンダーカレント

アンダーカレント

それでも僕らは、泣いて、泣いて、笑う。

人をわかるって
どういうことですか?



僕たちは過去に縛られている。
あの日、あの時は僕たちに無遠慮に癒着している。
悲しかったこと、つらかったこと、言葉にできない忘れたい想い。
頭の中から消し去ったつもりの過去は、体に染み付いて消えることはない。
それぞれが持つ、それぞれの、あの日。

このマンガには、ストーリーがある。
でも、どんな話なんだ、と聞かれるとどうにもうまく答えられない。
あることにはある。でも、あるとしか言えない。

僕たちは、うそをつく。
うそだと思わず、うそだと分かりつつ、うそだと分からないふりをしつつ。
うそは言葉だけじゃない。
朝のあいさつ、笑顔、無愛想な佇まい、自分自身。
確からしさが見当たらない、なんていうのは、もう手垢もつきつつあるテーマだ。

「理解というものは、つねに誤解の総体に過ぎない」
というのは、村上春樹の言葉。

それでも僕らは、自分を、相手を、分かったつもりで生きていく。


あたしは彼のこと
実はなんにも
わかってなかったの
かもしれない

そう思うのが
いちばん
つらいんだ






ゆっくりと、でも確実に流れている底流。
静かに、有無を言わさず流れて行く。

時折入ってくるコミカルなシーンが、静謐な物語の潤滑油になっている。
僕たちの口を開けさせ、そこにゆっくりと透明で重い水を流しこんでくる。

そして、挿入されるデュカ。

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   2



とても静かなマンガです。
そして、ピンと張りつめた緊張感も。
受験前の自習室のような、音を出すことがためらわれる空間。


私は死にたかったんだ
あの日からずっと


過去が僕たちから消え去ることはありません。
僕らは生きている限り、過去に縛られています。過去から生まれています。
ここで描かれているのは、「それでも生きて行くんだ!」という情熱ではなく、「それでも僕らは生きて行かざるをえない」という、バランスを崩せばすぐに絶望へと反転してしまいかねないものです。

危うい。
でも、だから人は寄り添う。

最後、物語はほんのわずかな光を残します。
希望とはまだ呼べない、小さな萌芽。
でも、歩き出していることは確かです。


人が独りでは生きられないのは、弱さでしょうか。
それとも、強さでしょうか。



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