珈琲時間

珈琲時間

コーヒーなんてどうでもいい。
君とさえ飲めれば。

さあコーヒーを飲もう今すぐに!
なぜなら人生はあっという間に過ぎ去ってしまうからだ!



コーヒーを飲んで、人生が変わることってそうはない。
コーヒーは、何も特別じゃない。
お茶だって、紅茶だって、何でもいい。
でも、コーヒーでしかできないこと、味わえない感覚、てのもあるんだろうなぁ、とのんびり思う。

前に紹介したアンダーカレントの作者、豊田徹也の2作目。
17の短編からなる、コーヒーに関係あるような、でも別にコーヒーがなくたって成り立ってしまいそうな物語。
茄子を題材に3つもマンガを書いてしまった黒田硫黄の『茄子』と、似ているかも。
でも、『茄子』以上に、この作品でのコーヒーには必然性が感じられます。

この作品も、決して何かを主張するような物語はなくて、はっきりとした終わりを見せなかったり、夢の中みたいにとらえどころのない話で構成されている。
この話が、読み手を強く感動させることは、ないでしょう。
でもそれは、上に書いたコーヒーともリンクしていて、決して特別な作品とは言えないのだけれど、この『珈琲時間』でしか読めない味もある、と思わされます。
むしろ、そうした輪郭線を持たない話だからこそ、僕らの奥に染みてくる。珈琲の深みと同じように。
ていうのは、ちょっとキザな表現ですかね。

でも、そんなくっさいことも言いたくさせる雰囲気を持っています。
お洒落、ていうとちょっとチープかな。
瀟洒な感じ。
瀟洒なんて初めて使ったかも知れない。
気になる方は、Yahoo辞典で。

そもそも、コーヒーを飲み始めるきっかけって、大半はかっこつけなんじゃないかと思っています。
何より、僕がそうですし。
でも、気がついたら、あの苦みを求めているんですよね。
そしてやっぱり、コーヒーを味わえる大人って、かっこいいなぁと思うんです。

前作と同じように、短編それぞれを「こういう話です」という風に要約するのは、難しい。
ミクロで見ればちょっとした出来事、でも人生ていうマクロな目でみれば、ささいな笑い話に、思い出にできるような。
それこそ、コーヒーでも飲みながら。

いろいろな話が、味が、あります。
コーヒーに”コーヒー”なんて種類がないように。
いろいろな味が、風味が、ある。

それらが集まった一軒のカフェのような空間が、この、『珈琲時間』です。



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