しあわせ/ストーリー

しあわせ

失恋したときって、失恋の曲が聴きたくなるよね。

なんで…
二人で幸せになるためなのに
何で人とつきあうことでもっと孤独になるの?




しあわせ


戸田誠二の作品は、痛い。
挫折、失望、不信、どうしようもなさ、やりきれなさ。
痛みがダイレクトに伝わってくる。

その原因の1つが、ここで描かれる痛みを、僕たちはとても共感できてしまうから。僕たちが目をそむけてきた痛み、フタをしてきた思い。それらがあふれてくる。

抵抗感のないナイフがするすると刺さってくる。
強烈な痛みだけが体の中で響きます。

でも、この2作品は、前に紹介した『生きるススメ』とは少し異なります。
『生きるススメ』よりも、希望の芽が育っているような、痛みのその先を見ることができるような内容。
それは、すごく単純に、前作よりも短編は減り、長い話が増えたからだと思う。

どういうことか。

戸田誠二の描く絶望は、マンガの絶望ではなく、実は純粋な現実でしかない。
勇者が魔王にやられるような、ファンタジーの絶望を描いているわけじゃない。
戸田のマンガに絶望が見えるのは、むしろマンガの世界に希望があふれてる、てことの裏返しでしかない。
戸田は、「現実」の僕たちが目をそむけがちだった部分に焦点を当てているに過ぎない。

現実は、手厳しい。マンガのようにはうまくいかない。
恋愛なんてそんな簡単にうまくいかないし、コマで輝く彼らみたいに自分に自信なんてもてない。

でも、戸田が描いているのが絶望ではなく現実だからこそ、物語は絶望だけじゃない。
現実が厳しくて、でもそれだけじゃない、てのは僕たちが一番よく分かってるはずだ。

『生きるススメ』は、絶望から、痛みから物語が始まった。この2作も、それは同じ。
でも、描かれる時間が長いから、物語は痛みで終わらない。
だって、現実は絶望で満席になってるわけじゃないから。
現実と同じように、彼らは何かを見つけ、その何かに希望を見いだす。

生きるススメ、しあわせ、ストーリー。
だんだんと作品に流れる時間は伸びて行く。
始めは断片の集積だった生きるススメは、『ストーリー』へと姿を変えていく。
物語は、希望を孕むようになっていく。

僕たちは、きっと目をそむけている自分の傷を、たくさん持ってる。
戸田誠二は、その傷を教えてくれる。そして、その傷を守り、治すための包帯になってくれる。

しみったれた現実に嫌になった人。
でも、つらいことばっかりじゃないはず、て密かに信じている人。
おすすめです。

優しく活を入れてくる本です。





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