『ベッドサイド』ーさびしい、さびしい、と体を重ねる

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あなたの上にわたしのからだを乗せたまま
 すこし眠るということの蜜



何がきっかけだったかは忘れたが、ふとある歌を思い出した。
いや、思い出そうとした。
歌といっても、五七五七七で綴られる短歌だ。

歌人の名前はまったく思い出す気配がない。

「たしか、すっごく衝撃的で、でも優しい歌だったはず。少女が泣いてたっけ」

という、おぼろげな記憶しかなかった。
それは、同じく歌人の穂村弘の文章で見かけたような気がする。

ということで、gooleを活用し、手当たり次第探して行く。

これも違う、違う、違う、んー、違う。
なにぶん、探しているものをちゃんと覚えていないから、どうしても勘と総当たりで探すしかない。

格闘すること30分、とうとう見つけることができた。
見つけた瞬間、「これだ!」と脳みそに電流が走る。


目を見ずに話す少女に平手打ち
 のようなくちづけ もう泣かないで


声に出す。32文字。
この短い言葉の中でくりひろげられる衝撃。
そして、余韻のように響く温かみ。

初めて見た時は、それこそ衝撃でした。

適切な例えじゃないかも知れないけれど、朝時計を見て「あ!遅刻だ!」と顔の血が引いた後に、今日が日曜日だったと思い出した時のような、じんわりとほぐれていく緊張。

今回ご紹介するのは、林あまりさんの歌集、ベッドサイドです。

彼女の特色は、大胆な性の描写です。
性を描く、というのはそれだけで過激になってしまいがちですが、彼女は”特別な何か”を歌っているわけではありません。
どこにでもいる、恋をして、セックスをして、愛情とさびしさを感じている少女たちです。


不誠実の極み尽くして
 なんでそうきれいな目をしてみつめられるの?


首すじをゆるくかまれて
 あ、とおもう間もなくあふれはじめる涙


他人と肌を合わせる。
だからこそ感じる孤独。
それは誰しもが感じることかも知れません。
でも、どこか、少女の特権のようにも思えます。


なにもかもうまくやってみせるから
 いまだけは放っておいて——朝まで


この歌集には、以前の歌もいくつか収録されています。
そのうちの1つ、歌集『MARS☆ANGEL』は、近未来の火星に生きる少女をテーマとして歌われています。




そんな異世界に住んでいても、やっぱり、少女は少女。
赤く小さい実のような恋がはじけています。

恋人に翻弄されているようで、踏み入ってもらいたくない、自分だけの世界を大事に抱きしめているような、少女。
そんな、強かさと寂しさがつまった歌集です。


いつかそのうちきっと沈んでいく街に
 ヴェニスという名をつけたのはだれ



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