『きみの家族』—普通だから、ドラマチック

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そんなことがあり

もちろん
あんなことも
こんなこともあり



夫婦と、その娘と息子。
そんな一姫二太郎スタイルの典型的な4人家族。

長女が、嫁ぎに行く。
たったそれだけのお話。

でも、この「たったそれだけ」の感触が、絶妙になっています。

サメマチオが出す2回目の単行本。
一冊目も以前ご紹介しています。


マチキネマ

(タメ語で書かれた書評に月日を感じます。ちょっと恥ずかしいです)


今作は、普通の家族を描いたマンガです。
そして、その普通を、真正面から描いています。

普通や日常をうたう作品は多くあります。
それらは、特に大きなイベントが起きるでもなく、変化の少ない日々を巧みに描ききっています。

そう、僕たちの生活には、ドラマチックな展開なんてほとんでありません。

でも、全くないわけじゃない。

恋、出産、卒業、就職、ペットを飼う……
そして、娘の結婚。

本当の日常とは、多くの何でもない一日と、ときおり訪れるドラマチックな瞬間とが混ざったものなんじゃないか。
そんなことを、読んでいて思わされました。

日本の全家庭を足して割ったような、平均的な家庭像。
日々の何でもない描写に、とても共感できます。

だから、長女の結婚も、フィクションではなく、普通の家庭が経験する、一大イベントとして読者に迫ってきます。

この、日常とドラマの舵取りが絶妙で、非常にきれいに「普通」が描かれています。

日常は、日常と非日常でつくられているのでしょう。

前作に比べて、とろみが出ているというか、肩の力が抜けている印象です。
『マチキネマ』の帯には、「ポエムみたいな一日だ。」という一文が書かれています。
今作には、「ニッポンの、フツーの家族」という一文。
まさに、という感じですね。


長女が感極まって両親への手紙をかけない、そんな描写も、違和感なくすっと胸に刺さります。
それは、これがマンガとして誇張された演出なのではなく、僕たちが自分を重ねられるように描かれているからです。


読み終わったあとに、本の題を見直してハッとしました。

『ぼくの家族』ではないんです。
『きみの家族』。

マンガらしいコミカルな描写が、読みやすさを増しています。
それは、ぼくたちの共感を邪魔するものではなく、むしろその奇をてらわない笑いに、より一層親密さを覚えます。

そうやって、こちらも肩の力を抜いて読むからこそ、ふとした拍子に涙が浮かびそうになってしまいます。

夕方の帰り道、ふと我が家をじんわり想う時のような、優しいノスタルジーが詰まった一冊です。



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