人生フルーツ—庭に流れる「まっすぐな時間」と「まるい時間」

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とても、口当たりの良い映画だった。

ともに白髪をなびかせる老夫婦。木立に囲まれた家に住まい、手間暇かけられた一品一品が食卓に並ぶ。何十年も愛用の台所用具を使い続け、付き合いある人への手紙を毎日したためる。映画の冒頭、海苔をコンロで炙るシーンは、彼らの暮らしを象徴する一コマだ。

「これぞ、”丁寧な暮らし”だな」

そんな平凡な感想を抱かせて、映画は始まった。

しかし、時間が進むにつれ、どうも様子が変わってくる。

ふたりの暮らしぶりが変わったわけでもない。口当たりの良さもそのままだ。ただ、どうも簡単には飲み込めない、ずしんとした重量が口の中に生まれてきたのだ。

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